最近読み終えた本が2冊あります。
一冊は楽天の役員で、技術研究所の所長でもある森正弥氏の「ウェブ大変化」。松江のオープンソースサロンで名刺交換していましたら、本を書いたので読んでと送ってくださいました。
「あらかん」ともなりますと、ITがどんどん遠くへ行ってしまうという感覚がありますが、この本を読んでみて、それは自分の責任だけではないかもと思えます。だって、ITの世界の進化スピードは、爆発的だからです。
以前にも、梅田望夫の「ウェブ進化論」をはじめ、ウェブ時代の現状や将来展望などを書いた本を何冊も読んできました。この「ウェブ大変化」では、爆発的に拡大するさまざまな新しいサービスやテクノロジーに触れられていますが、今回は、本当についていけないなあという感覚です。
ついていけないと感じる理由ですが、まず数字。インターネット上にあるデジタルデータ量は、2000年には6.1EB(エクサバイト)だったものが、07年には46倍の281EBに、11年にはその7倍の1.8ZB(ゼッタバイト)になるのだとか。
データ量は、この11年間に300倍に増えている。簡単に言うと、00年には書類が100枚だったとすると、一人が一日で処理できる量だったものが、07年には4,600枚、11年には3万枚近くに増え、今後更に爆発的に増えていくだろうと。
もう一つ数字を紹介すると、日本の大手製造業では自社サーバーを6,000台から8,000台所有しているといわれているが、MSやグーグルは全世界に300万台以上所有し、グーグルは世界1,000箇所で1,000万台以上のサーバーを運用しようとしているのだとか。
今まで特定の人や企業しか持ち得なかった情報が、利用しようとすれば可能となる環境ができてきています。つまり、今まで「こちら側」にしかなかった情報が、クラウドコンピューティングによって蓄積された「あちら側」の膨大な情報が新しいテクノロジーとサービスによって活用できる姿となって「こちら側」に提供されつつある。
すごく便利になってきているけれども、対応するスキルが必要だし、そのためにウェブと付き合う時間が増えていくのではないか、人がさらにバーチャル化するのではないか、そんなことを考えてしまいます。
もう一冊の本、岩波ジュニア新書、生田武志著「貧困を考えよう」、ジュニア新書だから?現代の貧困問題を幅広く取り上げ、問題点の整理がされていてとても参考になる本でした。
この本の最後に、「貧困ってなんだろう−経済の貧困と関係の貧困」という節があります。とてもうまくまとめられています。経済的には貧困層だけれども、例えば、「銭形金太郎」に登場する「ビンボーさん」のように、クリエイティブな人もいる。
野宿者のコミュニティーでも、助け合いのなかで元気だった方が、生保を受け住宅に住みだし、入院したり、急死してしまうこともあると。それは、経済の貧困から関係の貧困に移っただけではないかと。
以前にも書きましたが、この松江市でもうつ病がとても増えている。
精神科医の香山リカは、自分の学生時代、うつ病の罹患率は1%から2%と言われていたのが、今は、生涯有病率(一生のうちに1回うつ病になる率)が15%になると書いていました。
最悪は経済の貧困と関係の貧困が重なった方ですが、社会のもっとも大きな病理として関係の貧困があるのではないかと感じます。だから、人が尊厳ある人生を過ごし、まっとうできない。
ウェブの大変化は、なるほど便利にはなるのだけれど、社会の病理を癒す処方になるのか、それとも、社会の病理をより深刻にしてしまうのか、そんなことを考えてしまいました。
これはある意味極論で、自身で切り替えすることが必要だと思うのですが、みんながみんなできる訳ではないから関係の貧困が深刻化し、うつ病なども増えている。ですから、自己責任論だけでは厳しいなあと思っています。